Zed エディタ vs VS Code 比較レポート
概要
Zedは、AtomとTree-sitterの開発者によって作られた新しいオープンソースのコードエディタです。2023年にベータ版がリリースされ、2024年にオープンソース化されました。Rustで書かれており、GPU アクセラレーションを活用した高速性が最大の特徴です。
主要な違い
1. パフォーマンス
Zed の強み:
- Rustで書かれており、独自のGPUIフレームワークを使用
- GPU全体でUIをレンダリング(ゲームエンジンのような設計)
- 120 FPSを目標とした高速レンダリング
- 起動時間が極めて速い(ほぼ瞬時)
- 大規模プロジェクトでもスムーズに動作
- メモリ使用量が少ない
VS Code の課題:
- Electron(Chromium)ベース
- 多数の拡張機能をインストールすると遅くなる傾向
- 大規模プロジェクトでは起動が遅い
- メモリ消費が多い(特に複数の拡張機能使用時)
技術的背景:
- ZedのGPUIフレームワークは、矩形、影、テキスト、アイコンなどの各UIプリミティブ用にカスタムシェーダーを使用
- Signed Distance Functions(SDF)を利用した効率的なレンダリング
- 非同期Rustを活用し、複数コアにタスクを分散
- メインスレッドを8ms以内に保つことで120 FPSを実現
2. リアルタイムコラボレーション
Zed:
- コラボレーション機能がネイティブに組み込まれている
- 共有カーソル、音声/テキストチャット、画面共有が標準装備
- Slackのようなチャンネル機能
- セットアップ不要で即座に開始可能
- リアルタイムでシームレス
VS Code:
- Live Share拡張機能が必要
- 拡張機能として後付けされた感がある
- 時々動作が不安定
- セットアップがやや煩雑
3. AI統合
Zed:
- AIアシスタントがネイティブに統合
- Claude 3.5 Sonnet、OpenAI GPT、Gemini、Ollamaなどに対応
- LM Studioでローカルモデルも使用可能(プライバシー重視)
- エージェント編集(Agentic editing)機能
- コンテキストを理解した支援
VS Code:
- GitHub Copilotは拡張機能として提供
- 追加拡張機能のような扱い
- サブスクリプション費用が必要($20/月)
4. ユーザーインターフェース
Zed:
- ミニマリストなデザイン
- サイドバーの常時表示なし(デフォルト)
- コマンドパレット(Cmd+Shift+P)とファイル検索(Cmd+P)中心
- 必要な時だけパネルがスライドイン
- デフォルトでクリーンな見た目
VS Code:
- 左サイドバーに開いているファイル一覧を表示
- 多機能で設定項目が豊富
- カスタマイズ性が高い反面、設定疲れの可能性
5. 拡張機能エコシステム
VS Code:
- 非常に豊富な拡張機能ライブラリ
- ほぼすべてのニーズに対応する拡張機能が存在
- 成熟したエコシステム
- コミュニティサポートが充実
Zed:
- 拡張機能は限定的(開発中)
- WebAssembly(WASI)ベースの拡張機能アーキテクチャ
- サンドボックス化されたクロスプラットフォーム拡張機能
- 基本的なツールは組み込み済み(Git、AIなど)
- 将来的には拡張可能だが現時点では選択肢が少ない
6. 言語サポート
Zed:
- Language Server Protocol(LSP)に依存
- Rust、Go、TypeScript、Pythonなどで特に強力
- Pythonは Basedpyright をデフォルトで使用(Pylance は VS Code 専用)
- 必要な言語サーバーを自動インストール
VS Code:
- ほぼすべての言語に対応
- Microsoft の Pylance(Python用)など独自の言語サーバー
- 成熟した言語サポート
7. プロジェクト管理
Zed:
- プロジェクト切り替え機能がネイティブ
- 複数ウィンドウを開かずにプロジェクト間を移動可能
- シンプルで直感的
VS Code:
- プロジェクト切り替えには拡張機能(Project Manager)が必要
- Workspaces機能はあるが設定が必要
- 複数ウィンドウを開く必要があることが多い
8. その他の機能
Zed の特徴:
- Vim モード標準搭載
- ファイルアウトラインパネル
- 組み込みREPL
- キーボード中心の設計
- VS Code キーバインドのインポート可能
VS Code の特徴:
- 統合ターミナル(より成熟)
- デバッガー統合(より豊富)
- Git マージコンフリクト解決ツール(Zedは現時点で弱い)
- タスクランナー
プラットフォーム対応
Zed:
- macOS(最も成熟)
- Linux(安定版)
- Windows(ベータ → 2024年10月に正式リリース)
VS Code:
- すべてのプラットフォームで成熟した対応
パフォーマンスベンチマーク例
複数のユーザーレポートによると:
- 起動時間: Zed は VS Code の数倍高速
- メモリ使用量: Zed は VS Code より大幅に少ない
- 大規模ファイル処理: Zed の方がスムーズ
- CPUファン回転: Zed では静か、VS Code では頻繁に高速回転
移行の容易性
VS Code から Zed への移行:
- VS Code の設定を自動インポート可能
- VS Code キーバインドをそのまま使用可能
- UI が似ているため学習コストは低い
- ただし一部の拡張機能が使えない
現在の制限事項
Zed のデメリット:
- 拡張機能エコシステムが未成熟
- Git マージコンフリクト処理が弱い(ハイライトさえない)
- 一部の高度な機能が欠けている
- コミュニティがまだ小さい
- Multi-root workspace 未対応
VS Code のデメリット:
- パフォーマンスの問題(特に多数の拡張機能使用時)
- メモリ消費が多い
- AI機能が頻繁に追加され、無効化が面倒
- 起動時間が長い(大規模プロジェクト時)
適している人
Zed が適している人:
- パフォーマンスと速度を最優先する人
- ミニマリストなUIを好む人
- リアルタイムコラボレーションを頻繁に行う人
- Rust、Go、TypeScript、Python開発者
- 設定に時間をかけたくない人
- 新しいツールを試すのが好きな人
VS Code が適している人:
- 豊富な拡張機能が必要な人
- 成熟したエコシステムを重視する人
- 特定の拡張機能に依存している人
- 複雑なカスタマイズが必要な人
- 安定性と信頼性を最優先する人
- あらゆる言語とフレームワークをサポートする必要がある人
結論
Zed は非常に有望な次世代エディタですが、まだ開発途上です。速度とシンプルさを求めるならZed、豊富な機能と成熟したエコシステムを求めるならVS Codeという選択になります。
多くのユーザーは以下のような使い分けをしています:
- 日常的なコーディング → Zed(速度重視)
- 複雑なデバッグやGitマージ → VS Code(機能重視)
Zedの開発は活発で、今後さらに機能が充実していく見込みです。特に拡張機能エコシステムの成長次第では、VS Codeに完全に取って代わる可能性もあります。
技術スタック比較:
参考リンク:
- Zed公式サイト: https://zed.dev/
- GPUI技術解説: https://zed.dev/blog/videogame
- VS Codeからの移行ガイド: https://zed.dev/docs/migrate/vs-code